PROTOTYPING REPORT | 2015.12.2

2人乗りi-ROAD、はじまる。

  さる11月20日、OPEN ROAD PROJECTの取り組みの一環として、TOYOTA i-ROADの2人乗り実証実験開始についてのニュースリリースが発表された。これは、後部座席などに改良を加えることで2人乗り仕様にしたi-ROADを、国土交通省の認定制度の下、渋谷・世田谷とともに実証実験をする試みだ。 i-ROADが2人乗りになることで、どんな楽しみが都市の人々に広がっていくのか? 詳細は右記のリンクか、このサイトのプロトタイピングコーナー内「2人乗り i-ROAD」をクリックしてほしい。 2人乗りi-ROAD http://openroad-project.com/prototyping/twoseater   PHOTOGRAPH BY Tomoyuki  Kato ISSUED : 2 December 2015    

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PROTOTYPING REPORT | 2015.11.2

「どこでもSTATION」とは?

 「都市の移動を、もっと自由に」ーーそんな想いのもと、進められているOPEN ROAD PROJECTのプロトタイピング。その中でも日々着々と、進化を続けているサービスのひとつ「どこでもSTATION」。このサービスでは、i-ROADの特長を活かしながら、“電気をシェアする未来”を提案している。身近でありながら、誰も目を向けなかった都市のインフラを利用することで、 i-ROADの行動範囲を格段に広げてくれるこのサービス。 暮らしの中に埋もれている意外なリソースを、ネットワーク化しながら有効活用することで、どんな未来が見えてくるのか。 その詳細は、右のリンクをチェックしてほしい。どこでもSTATION http://openroad-project.com/prototyping/station TEXT BY Keita Fukasawa (contributor) PHOTOGRAPH BY Yuta NishidaISSUED : 2 November 2015

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PROTOTYPING REPORT | 2015.10.6

3Dプリンター × 日本の職人技術で切り拓く未来
カブク 稲田雅彦代表インタビュー 02

稲田雅彦(いなだ・まさひこ) 株式会社カブク 代表取締役CEO 大阪府出身。2009年、東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。修了後、博報堂にて新規事業開発に携わり、カンヌ、アドフェスト、ロンドン広告祭、TIAAなど、受賞歴多数。2013年に株式会社カブク設立。主な著書に『3Dプリンター実用ガイド』などがある。 進歩し続ける3Dプリンターと、ものづくりの未来 ——i-ROADのエクステリアパーツなどをカスタマイズできるサービス「ROAD KITCHEN」にも導入されている3Dプリンターですが、この技術を巡る世界的な潮流はどうなっているのでしょうか。 カブク代表 稲田雅彦 3Dプリンター自体についていえば、これまではアメリカやイスラエルの製品が市場を独占していましたが、家庭用3Dプリンターに関しては2009年、産業用についても2014年にそれぞれ特許が切れました。これに伴い、新規参入する企業が一気に増えて、製品のクオリティもまさに加速度的に向上しているというのが現状です。 ——そうした状況の中で、これから3Dプリンターの導入が期待される分野は? 稲田 航空宇宙や医療の分野でしょうか。海外の例ですが、例えばボーイング社は、航空機のジェットエンジンや機体の部品などを作るのに用いています。また、医療分野では、生体に吸収される樹脂を使うことで、これまではボルトを体内に埋め込まなくてはならなかった処置が、ボルトなしでできるようになりました。また、これまでは強度や表面の仕上がりの問題で、金型の代わりとして用いられる場合が多かった3Dプリンターですが、精度の向上に伴い、最終製造品にも使われ始めています。スピードがまだ遅いという難点はありますが、それもすぐに解決されるでしょう。  ——その結果、今後どのような展望が見込まれますか。 カブク 横井康秀 ずばり、DIY的な感覚で、個人レベルでも高精度の最終製造品を大量生産できるようになることです。例えば、我々は自分たちのオフィスで使う日用品を自前の家庭用3Dプリンターで作ったりしていますが、そのデータをそのまま使い、ワンクリックで大量生産することも可能になるでしょう。 稲田 これまでなら、製品化を実現するには数百万かけて金型を作り、ミニマムロットの製造個数を設定して、そのコストに見合う利益を回収できるかどうかを考えなければなりませんでした。しかし、その必要がなくなるので、当然、在庫を抱える心配もありません。 横井 一方で、造形の自由度も飛躍的に高まります。金型を使った従来の製造方法では、金型からうまく抜き取ることができる形状かどうかが制約になっていたわけですが、3Dプリンターであればこういったことも考慮しなくてよいので、力学的に追い込んだ形を作ることができますから。 稲田 その上で、我々は3Dプリンターメーカーでも、単なる出力サービスでもありません。いわば、3Dプリンターをはじめとするデジタルファブリケーションを使った新しいものづくりのためのシステムそれ自体を作っているのです。 横井康秀(よこい・やすひで) 株式会社カブク インダストリアルデザイナー オーストラリアで育ち、多摩美術大学を卒業。光学機器メーカー・ニコンのデザイン部に配属され、インダストリアルデザイナーとして一眼レフなどのデザイン戦略から量産まで、横断的にデザインに携わる。2014年よりカブクに正式参画。iF デザイン賞、レッド・ドット・デザイン賞など受賞多数。 3Dプリンター × 日本の職人技術で世界に挑む ——そうした状況の中で「ROAD KITCHEN」プロジェクトの開発に携わられたわけですが、現在の手応えはいかがですか? 稲田 おかげさまで、デジタルファブリケーションに関わる人たちの間ではすごく話題になりました。「日本でも3Dプリンターで最終製造品を作る流れがついに来たか!」と。 ——海外に比べて、日本で3Dプリンターの導入が遅れている理由は何なのでしょうか? 稲田 法的な制約条件があるというのもそうですが、業界の慣習が邪魔をしている面も大きいです。失敗を恐れる社会ということに加えて、大量生産が基本なので、いかにトラブルなくスムーズに進められるかどうかが問われてくる。ですので、新しい技術の導入に伴ってリスクが少しでもあると、排除されてしまう。だから、そういう意識の部分から変えていかなければいけないのです。しかし、イノベーションとは常にそういうもの。この技術を、きっちり“世の中ゴト化”していくのが重要だと思っています。 ——そう考えればなおさら、「ROAD KITCHEN」の試みとしての先進性が際立ちますね。 横井 そうですね。大企業的な大量生産品では、スケッチを書いてから、それら一つひとつのフェーズに関して重役会議で決定していくのが一般的です。しかし、このプロジェクトに関しては、3Dプリンターによる試作のスピードアップに加えて柔軟な開発体制のおかげで、普通なら1〜2年かかることが、半年以内でできてしまった。これにはカーデザイナーの友人も「アグレッシブだなあ!」と驚いていました。 ——逆に、日本のものづくりに対して可能性を感じたところはありますか。 稲田 まず何よりも職人の圧倒的な技術力ですね。今回のプロジェクトでは、燕三条の職人にパーツの最終的な磨き加工をお願いしたのですが、そのクオリティは機械的な加工ではまったく太刀打ちできません。そして、製品の最終的なクオリティを最大化しようという意識の高さ。これも海外とは比べものになりなせん。そうした技術力と信頼性に関しては、日本は世界で抜きん出ていると思います。   横井 じつは、燕三条の職人に依頼することになった経緯にしても、我々から提案したわけではなく、工場とやりとりしている中で「研磨しないと十分なクオリティを出せない」という提案があったのです。いずれにしても、クオリティゴールの設定の高さは日本ならではだな、と感じさせられました。 稲田 実際に、最終製品のクオリティは圧倒的でした。プリンターが同じなら最終クオリティも同じだと思うのは、じつは大間違いです。残り2割の後工程の仕方によって、感覚値的には8割くらいも差が出てくる。ここまでのクオリティのものは、海外だけではそうそうできないでしょうね。メイド・イン・ジャパンを見慣れている日本の消費者の目は厳しいので、質基準はかなり高い。そして、そうした目に鍛えられてきた日本の工場と組めるということは、世界に勝負をかける上では圧倒的な強みでもあるのです。 ——その上で、今回は自動車メーカーとのコラボレーションになりましたが、どんな発見や手応えがありましたか。 横井 自動車というのは、パソコンやスマートフォンよりも個人との結びつきが強く、パーソナライズされやすいプロダクトです。例えば「この車種に乗っているということは、この人はきっとこういう人柄なのだろう」と想像を巡らせたことが、誰でも一度はあるはずですよね。そうした視点から見ると、自動車というプロダクトと、個人的なカスタマイズとの親和性は、いま主流になっているスマートフォンのケースとのカスタマイズよりも、遙かに高いのではないかと思いました。 稲田 自動車は日本の製造業を象徴するものであり、老若男女問わずワクワクできるもの。その新しい試みといえるプロジェクトに関わることができたのは、とても光栄であるとともに、自分たちにとってもワクワクする体験でした。今後も、よりお客様が愛着の湧くカスタマイズを提供できるよう、精進していきたいと思います。 (03へ続く/  「ROAD KITCHEN」プロジェクトに関わる人々に未来の展望を聞いていく予定)   ・「PROTOTYPING REPORT」バックナンバー  ものづくりをオープンにすれば社会はもっと楽しくなる  カブク 稲田雅彦代表インタビュー 01   INTERVIEW BY Keita Fukasawa (contributor) TEXT BY Keisuke Kagiwada (contributor) PHOTOGRAPHS BY Kazuharu Igarashi ISSUED : 6 October 2015  

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PROTOTYPING REPORT | 2015.7.4

ものづくりをオープンにすれば社会はもっと楽しくなる
カブク 稲田雅彦代表インタビュー 01

稲田雅彦(いなだ・まさひこ) 株式会社カブク 代表取締役CEO 大阪府出身。2009年、東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。修了後、博報堂にて新規事業開発に携わり、カンヌ、アドフェスト、ロンドン広告祭、TIAAなど、受賞歴多数。2013年に株式会社カブク設立。主な著書に『3Dプリンター実用ガイド』などがある。3Dプリンターで世界にひとつだけのオリジナルパーツがつくれるーー未来志向の都市型モビリティを目指す取り組みの中でも、「自動車のパーツを自分好みにカスタムできる」というTOYOTAの試みに驚きました。カブク代表 稲田雅彦(以後、稲田) そうですね。デジタルファブリケーション、つまりデジタルな製造技術の進化にともなって、誰もが好きなデザインを選んでカスタムできる時代が到来しました。さらにはユーザー自らが3Dデータをつくり、3Dプリンターで出力するなど、新しい発想でものづくりができるようになる。そんな近い未来に向け、自動車メーカーであるTOYOTAさん自らが率先してプラットフォームと呼ぶことのできる仕組みをつくり出そうとしています。これはたいへん画期的なことですし、デジタルファブリケーションに関係する人々の間では世界的にも大きな注目を集めています。 「ROAD KITCHEN」からオーダーすることのできるフロントカバー。iPhoneやスマートフォンのケースを付ける感覚で、自分だけのカスタムパーツをつくることができる。ものづくりをオープンにすれば社会はもっと楽しくなるーーすごくワクワクする話ですね。そもそもカブクとしてこのプロジェクトに関わるに至った経緯について、教えてください。稲田 ふとしたきっかけで、i-ROADの開発チームの方々にデジタルなものづくりサービスを紹介する機会がありまして。デジタルファブリケーションの普及によって、これまでは大企業でなければつくることのできなかったプロダクトが個人でも製造可能になり、さらに大量生産・大量消費の仕組みによらず、1点だけのものをつくることができるようになる。そして、その後押しをしていくのが我々の使命だ、というお話をしたところ、興味を持っていただいて、ディスカッションが始まっていった......というわけです。 7種類のデザインと9色のカラーを組み合わせてオーダーすることができるドリンクホルダー。お絵描きソフトを使い、正面部分に好きなデザインを刻印することも可能。ーー3Dプリンターなどの新しい技術が生まれたことで、誰もがものづくりの世界に参加しやすくなったということですね。稲田 ソフトウェアやITの世界は、オープンソースやオープンアーキテクチャーなど情報を公開することで大きくなって、次々と社会を変えていきました。その例にならい、ものづくりの世界ももっとオープンにすることで、新しい何かが生まれるのではと考えているのです。我々はそれを「ものづくりの民主化」とよんでいます。弊社の『 rinkak (リンカク)』というサイトには『READY-MADE HACK』というサービスがあります。そこでは無料でペットボトルキャップの3Dデータを公開しているのですが、ペットボトルのキャップに取っ手を付けて持ち運びしやすくカスタムする人が出てきたり、じょうろのように使えるものが生まれたり、マラカスができたりと、生活のなかで「こんなものがあればいいな」というものが、公開されたデータと3Dプリンターの組み合わせによってすぐに実現できてしまう。それらをさらに使いやすくカスタムする人が現れて、アイデアやデザインがどんどんブラッシュアップされるなど、みんなの意見がどんどんと反映されていくのです。カブクが運営する、3Dデータをアップロードするだけで、誰でも製造・販売・発送が簡単に行えるプラットフォームサービス『rinkak (リンカク)』のトップ画面。 https://www.rinkak.com/jp/openroad?hl=ja ーーこれまで工業的なものづくりといえば、お金もかかるしハードルが高いものでしたが、デジタルファブリケーションによって敷居が下がってきた。すると徐々に集合知が形成されていき、最終的には「ものづくりの民主化」が促進されるというわけですね。稲田 そうなんです。データを無料で公開すれば、みんなで改良していこうという流れが生まれて「もののリミックス」のような動きが立ち上がってくる。また、個人の方でもデータをサイト上にアップするだけで、金型もいらず、在庫も抱えずに全世界へ自分の製品を販売することができるのです。ーーなるほど。音楽の世界でいえば、「初音ミク」のような音声合成ソフトが生まれたことで、個人でもヴォーカル付きの楽曲を自由に発表できるようになっていった。それが動画サイトに投稿されて、音楽だけでなく映像やグラフィックなど、ファンを巻き込んでさまざまな方向に広がっていったのと似ていますね。そう考えると、「ものづくりの民主化」もすぐにやってきそうな気がします。稲田 そうですね。とはいえ、3Dデータを設計するのは技術的なハードルがまだ高いのが実情です。ですからいまは、設計の知識がない方でも簡単にデータがつくれるようなサービスを立ち上げたり、工場など法人の方がより効率的にものをつくれるようなサービスの開発など、徐々に入口を広げている段階ですが、技術を使いこなす人々の数がものすごいスピードで増えつつあるのを実感しています。製品を自分でカスタムするのがあたり前の時代 ——最初にi-ROAD という新しいモビリティの発想を聞いて、そこからデジタルファブリケーションを組み合わせて何かできないかという話になったとき、どんな印象をもたれましたか。稲田 オープンイノベーションや、デジタルファブリケーションにとってすごくいい機会だと感じました。というのも、いまのものづくりはターゲットがどんどん細分化されて、これまでのマスプロダクション(大量生産)ではもはやフィットしなくなってきています。みんな自分でカスタマイズしたり、自分でいじるのが当たり前になっているのに、メーカーにはそれに応えるツールがない。そこに対してのひとつの解決案が、デジタルファブリケーションであり、オープンイノベーションでもあるので、我々にとってはものすごくいいチャンスだなと思いました。ーー「自分でカスタムするのがあたり前の時代になっている」というお話がありましたが、どういうものが例として挙げられますか。稲田 カスタムまでいかないにしても、世の中にはiPhoneやスマートフォンのケースが大量にあり、みなさんそれを楽しんでいます。また、日本だと『 minne (ミンネ)』、海外だと『 Etsy (エッツィー)』のような手づくり作品のマーケットプレイスが人気で、すでに2000億円を超えるほどの市場になっています。もはや「大量生産品を買って終わり」という時代ではないんですよ。 (02へ続く)ISSUED : 4 July 2015TEXT BY Eizaburo Tomiyama (contributor) PHOTOGRAPHS BY Masahiro Kato,Tomoyuki Kato  

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