自転車をスマート化する「Copenhagen Wheel」プロジェクトに見る 都市交通の未来

OPEN ROAD PROJECT INNOVATION REVIEW

ICT(情報通信技術)をはじめとする最先端技術が人々の創造性を解き放ち、都市や社会、私たちの価値観すらも、猛スピードで更新していくかつてない時代。
人工知能の爆発的発達、脳科学とビジネスの融合、ロボティクスから、デジタルによる“ものづくり革命”、IoT(Internet of Things)までーー。
国境や文化、分野や技術領域すら縦横無尽に飛び越えて、すぐそこにある未来を描き出す、“イノベーションの種”に注目していこう。

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自動車、バス、電車、自転車、歩行者、建物など、都市は様々な要素によって構築されている。これらが組み合わさることによって生まれている、現代の都市が抱える課題は複雑で、多様だ。だが、これから未来へと向かっていく上で、私たちはこうした都市が抱える課題を解決していかなくてはならない。

なぜなら、都市は数多くの人々の暮らしに関わるだけではなく、自然環境にも大きく関わってくる。都市にイノベーションを起こすことができれば、人々の暮らしから環境課題まで、多くの課題を解決することにもつながっていくはずだ。

現在、世界の各都市で、都市環境を改善しようというアプローチが様々な角度から起こり始めている。イノベーションの端緒とでも言うべき現象たちを紹介していくことで、これから都市が向かうべき未来の輪郭を少しでも明らかにしていきたい。

まず、最初に紹介したいのは、市民にとって重要な交通手段のひとつである自転車に関する活動だ。

自転車を利用する人も多いヨーロッパの各都市では、自転車に関する先進的な取り組みがいくつも実施されている。バイクハイウェイの設置やバイクシェアといった取り組みに加えて、テクノロジーを活用した自転車に関するプロジェクトも存在している。

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自転車を「スマート化」する技術

デンマークの首都コペンハーゲンでは、普通の自転車を電動ハイブリッド自転車にパワーアップしてくれる車輪ユニット「Copenhagen Wheel」を活用したプロジェクトがスタートしている。

このユニットを装着すると、ブレーキをかけた時や下り坂を走行する時のエネルギーをバッテリに蓄える、ハイブリッドカーにおける「回生ブレーキシステム」のような技術を活用できる。

電気を蓄えることにより、上り坂を走行する時や、平坦な土地で走り出しを早くしたい時に貯めたエネルギーを活用可能だ。

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自転車とIoT、そしてオープン化

「Copenhagen Wheel」を開発しているのは、Superpedestrian社。このユニットは、同社が開発するモバイルアプリと連携することにより、どれだけ坂をのぼったか、自転車で移動したことでカロリーをどれだけ消費したのか、といったフィットネスデータを記録する。

自転車乗りたちは互いにコミュニケーションをとることも多い。「Copenhagen Wheel」では、サイクリングデータを記録し、シェアできるようアプリもサポートされている。

さらに、近年注目を集めているスマートロックの技術も用いられており、持ち主が自転車から離れる際には自動的にロックされ、近くに戻ってくるとロックが解除されるようにも設定できる。

開発者向けにSDKも公開しているので、デベロッパーたちは自らの創造性を発揮して、さらに「Copenhagen Wheel」を使いやすくするためのアプリケーションを開発することもできる。「Copenhagen Wheel」はプロダクトをリリースした後も、まだまだ進化していくというわけだ。

都市環境における「移動」問題を解決するために

「Copenhagen Wheel」を開発したSuperpedestrian社のAssaf Biderman氏は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の「SENSEable City Laboratory」研究所の副所長も務めている人物。

彼は、同研究所で都市環境における重要な問題たちをテクノロジーによって解決する方法を探求していたときに、「Copenhagen Wheel」のアイデアを思いついた。彼らがこのプロダクトで解決しようとしたのは、都市の「移動」に関する問題だ。

坂道もらくらく移動でき、長距離もものともしないようになれば、都市を自転車で移動することが今よりも容易になる。都市交通における交通渋滞、電車の混雑、自動車による排気といった課題たちを軽減することにもつながる。なにより、自転車に乗ることが増えると自然と身体を動かすようになり、乗り手の健康面にも寄与する。

注目すべきは、「Copenhagen Wheel」が収集する各自転車の移動状況は、理想的な移動ルートの推定や都市の交通状況の把握などにも応用できる。こうしたビッグデータを解析することで得られる情報は、ユーザだけでなく、都市を管理する自治体にとっても有用なものとなる。

都市の過密化への解決策として、欧州を中心に自転車の存在が再度見直されてきている中で登場した「Copenhagen Wheel」は、都市を変える大きな可能性を秘めている。

ISSUED : 4 July 2015

TEXT BY Junya Mori (contributor)
PHOTOGRAPHS BY Superpedestrian Inc.