家と都市がつながる時代、人々の移動体験はどう変化するのか

OPEN ROAD PROJECT INNOVATION REVIEW

ICT(情報通信技術)をはじめとする最先端技術が人々の創造性を解き放ち、都市や社会、私たちの価値観すらも、猛スピードで更新していくかつてない時代。
人工知能の爆発的発達、脳科学とビジネスの融合、ロボティクスから、デジタルによる“ものづくり革命”、IoT(Internet of Things)までーー。
国境や文化、分野や技術領域すら縦横無尽に飛び越えて、すぐそこにある未来を描き出す、“イノベーションの種”に注目していこう。

「IoT」と呼ばれる言葉がある。Internet of Thingsの略語であり、日本語では「モノのインターネット」と訳されている言葉だ。

これまではネットワークに接続してこなかったファッションアイテムや家電、自転車や自動車などに通信機能が備わるようになり、人々の生活を大きく変えようとしている。

IoT領域における動きは、未来の都市における移動を考える上で非常に重要なものだ。今回は、都市とIoTがどう関係していくのかを紐解いていこう。

スマートホームメーカー「Nest」の躍進

IoTへの注目度が大きく増した事例として挙げられるのは、スマートサーモスタットや煙と一酸化炭素の検知器を製造してきた「Nest」という企業がGoogleに32億ドルで買収されたことだろう。

Nestの最初のプロダクトである「Nest Learning Thermostat」がリリースされた際、その美しいUIと、プロダクトがもたらす優れたユーザー体験が話題となった。

Nestの仕組みを表した動画

その後、Nestは煙と一酸化炭素を検知する「Nest Protect」を開発。Googleの子会社となった後は、ホームモニタリングのDropcamを5億5500万ドルで買収し、ネットワークカメラ「Nest Cam」を開発するなど、複数のプロダクトを展開している。

もちろん、Nestが市場へと送り出しているプロダクトも注目なのだが、同企業が注目されるのはプロダクトだけが理由ではない。

都市という視点から見ると、Nestが2014年6月に発表したスマートホーム分野の開発者向けプログラム「Works with Nest」が注目に値する。

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サードパーティとの連携によって家と都市が接続

「Works with Nest」は、さまざまな端末や自動車などと連携し、スマートホームのハブとしての役割を果たしていくことを目的としたものだ。

フィットネストラッカー、照明、スプリンクラー、鍵、洗濯機など、さまざまなデバイスやサービスを開発している企業が「Works with Nest」のプログラムに参加し、パートナーシップを締結している。

中には、ガレージの開閉を行うChamberlainや、自動車にデバイスを取り付けて通信可能にしているMercedes-BenzやAutomateといった企業とのパートナーシップもある。

外出時、自動車に乗って出かけていくと、家から離れたことを感知し、自動で鍵の施錠が行われ、空調の電源が落ちる。外で用事を済ませ、自動車に乗って帰宅する途中、自宅までの距離を自動で計測し、自動車から自宅の空調へと通知が行われ、家に着くころには自宅が快適な温度になっている。自宅に到着すると、自動車とガレージが連携、自動でガレージの開け閉めが行われる。

「Works with Nest」によって生まれる連携により、こうした体験が可能だ。家と車、双方がネットワークに接続し、デバイス同士が連携することで、外出先での行動が家の環境に影響を与えるようになった。

この流れが進めば、都市でのさまざまな行動が家の環境へと反映され、逆に家での活動が都市に反映されるようになっていくことが予想される。

オートメーション化する移動体験

Nestが生み出しているプロダクトのうち、スマートサーモスタット「Nest Learning Thermostat」は、空調を家全体で管理する欧米ではすでに普及し始めている。

日本は部屋ごとに空調を管理しているため、サーモスタットが欧米と同じように普及するのは難しいかもしれない。だが、Nestが提供する火災報知機「Nest Protect」や、ネットワークカメラ「Nest Cam」であれば、インフラの影響を受けることなく日本でも導入は可能だ。

日本でもスマートホーム関連のプロダクトは登場し始めている。こうしたプロダクト同士が連携するようになれば、人々はさらなる快適さを手にすることができる。

スマートホーム領域において目指されているのは、オートメーション化だ。ユーザーがスマートフォンなどのデバイスを使って操作することなく、行動に合わせて自動で快適なサービスが受けられる状態を生み出そうとしている。

人、モノ、家、そして都市。さまざまなものが互いに接続されていく未来においても、オートメーション化は重要になるだろう。

移動しているだけで、各場面で快適な体験が可能な未来とはどのようなものか。それを想像すると、これから先に登場しそうなサービスが予測できるのではないだろうか。

 

「OPEN ROAD INNOVATION REVIEW」バックナンバー
自転車とスマート化する「Copenhagen Wheel」プロジェクトに見る 都市交通の未来

 

TEXT BY Junya Mori (contributor)
PHOTOGRAPHS BY Nest Labs

ISSUED : 10 September 2015