オンデマンドな公共交通機関が都市における人の移動を変える

OPEN ROAD PROJECT INNOVATION REVIEW

ICT(情報通信技術)をはじめとする最先端技術が人々の創造性を解き放ち、都市や社会、私たちの価値観すらも、猛スピードで更新していくかつてない時代。
人工知能の爆発的発達、脳科学とビジネスの融合、ロボティクスから、デジタルによる“ものづくり革命”、IoT(Internet of Things)までーー。
国境や文化、分野や技術領域すら縦横無尽に飛び越えて、すぐそこにある未来を描き出す、“イノベーションの種”に注目していこう。

利用者の要求に応じてサービスを提供する方式のことを「オンデマンド」と呼ぶ。これを交通機関に応用したオンデマンド交通サービスは、今世界中で話題となっている。

世界の各都市で話題となっているオンデマンド交通サービスといえば「Uber」が挙げられる。スマートフォンのアプリから、付近にいるハイヤーを呼び出し、指定の場所から目的地までユーザーを運んでくれる。事前にクレジットカード情報を登録しており、カード決済されるため、その場で現金で支払いをする必要もない。

こうしたサービスは個人から多くても数人規模を対象として提供されている。こうしたオンデマンドの交通サービスが、さらに大きな規模で提供されるようになったとしたら、都市はどう変化するのだろうか。

innovation02_sub01-compressorヘルシンキのミニバスシステム「kutsuplus」

オンデマンドな公共交通機関の試み

たとえば、主流な公共交通機関であるバス。実は、オンデマンドでバスを運航する取り組みが以前から日本でも行われている。

オンデマンドバスは、都市部だけではなく、過疎化によって運営が困難な地方の交通機関の現状解決手段として注目されるほか、自然環境への負荷軽減の方法としても注目されている。

東京大学大学院では、オンデマンド交通システム「コンビニクル」の開発に取り組んでいる。ドア・トゥー・ドアで運行し、時間を守る交通システムを実現している。

さらに、このオンデマンド交通システムは、運行すればするほどより正確な移動時間を導出できるようになっている。運行し、データを蓄積すればそれに合わせてシステムをどんどん改善していくことが可能だ。

innovation02_sub02-compressorスマホの画面を運転手に見せてバスに乗車

ヘルシンキのミニバスシステム「kutsuplus」

フィンランドには、オンデマンドバスと冒頭で紹介したUberのような交通手段とが組み合わさったような交通手段が存在する。

ヘルシンキの街中を走る青色のバス「Kutsuplus」は、9人乗りのミニバスで、乗車にはスマホのアプリを利用。乗客はアプリに出発地点と目的地点、希望時刻を入力すると、アプリが即座に、乗車地点・降車地点・時刻を返してくれる。システムが乗客のニーズに合わせた最適なルートを割り出し、随時運行されるようになっているのだ。

料金は自動的に引き落とされるようになっているため、手持ちの小銭などがなくても、利用することが可能。なお、料金は普通のバスよりは高く、タクシーよりは安い。

「Kutsuplus」の事例は単体でも注目だが、ヘルシンキでは「自家用車が走らない都市」になるという都市計画の一環として捉えていることにも注目だ。

innovation02_sub03スマホのアプリで予約や支払いが完了

 

 

公共交通機関のオンデマンド化による影響

個人の行きたい場所に、行きたいタイミングで行くことができ、かつタクシーなどの個人利用の交通手段と比較して安い値段で提供されるようになれば、都市における人の動きが変わる可能性がある。

オンデマンドバスが利用できるようになれば、より多くの人が希望する場所から場所へと移動しやすくなる。これまではバス路線がないことで移動が困難になっていた老人や、人を呼びこむことに苦労していた場所でも移動しやすくなるため、都市のモビリティとアクセシビリティを高めることへとつながる。

オンデマンド交通はシステムに接続されているため、人の移動データを取得し分析することが可能だ。こうした人の移動データは、都市計画へと展開することなども視野に入れられている。オンデマンドバスは、都市の移動を、そして都市そのものをどう変えていくのだろうか。

 

「OPEN ROAD INNOVATION REVIEW」バックナンバー
#01 自転車とスマート化する「Copenhagen Wheel」プロジェクトに見る 都市交通の未来
#02 家と都市がつながる時代、人々の移動体験はどう変化するのか

TEXT BY Junya Mori (contributor)
PHOTOGRAPHS BY HSL

ISSUED : 8 October 2015